統一特許条約および裁判所

特許に関する依然として不透明な問題の1つが、統一特許条約(UPA)および統一特許裁判所(UPC)の今後です。

 UPCが発効すると、UPA締結国について、特許権者は、侵害、有効性および所有権を目的として、単一の統一特許として欧州特許を有効化する選択肢を有することになります。UPA締結国内で有効化された既存の欧州特許は、それらが新たなシステムからオプトアウトされない限り、UPCが管轄することになります。

イギリスがEUに加盟している間、UPCはイギリス、フランス、およびドイツにより批准された場合にのみ発効することができます。イギリスがEUを離脱する前にイギリス政府がUPCを批准しなかった場合、UPCはイタリア、フランス、およびドイツにより批准された場合に発効します。

イギリス政府は、批准を可能にする作業を完了したところです。最近開催された主要な利害関係者による会議では、イギリスのEU離脱にも関わらずUPCを推し進めることに対する強い支持がありました。しかしながら、イギリスのEU離脱に関連する問題を非常に多く取り扱っているイギリス政府にとって、UPCの批准の優先度が低くなるのはもっともなことであり、現在のところ、UPCが2017年に発効するのは考えにくいと思われます。

 イギリスがUPC制度に加入するか否かに関して遅滞および不透明さがあるにもかかわらず、特許権者は、ライセンスなどの既存の特許関連の契約にUPCが与え得る影響について検討する必要があり、場合により既存の被許諾者と協議してUPCへの対処法を決定しておかなければなりません。国民投票後に留意する必要のあるさらなる要素は、イギリスがUPC制度に加入せず、現在の更新料案が維持される場合、UPCの更新の費用対効果分析があまり有利なものとならない場合があるということです。